第3回の協議についての報道で、なんと、ヘリパッド問題が取り沙汰されていました。でも、何だかよく判りません。
「辺野古前提明確にせず/第3回協議/県の質問に政府」『沖縄タイムス』2015年8月25日1面。
「政府から沖縄の基地負担軽減や日米地位協定に関する取り組みなどの説明と北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯移設で県側に協力を求めた。」
なんと、「事務レベル」と設定された第3回目の政府との辺野古協議で、ヘリパッド問題。県にいったいどんな「協力」を求めたのでしょうか。安慶田副知事はなんと応答したのでしょうか。1面のこの記事からは何も判りません。
「辺野古の議論無風/県、事務レベルを意識/政府関係者『拍子抜け』」『沖縄タイムス』2015年8月25日2面。
政経部・福元大輔「県の矛盾探る政府/辺野古以外 知事は明確化必要」『沖縄タイムス』2015年8月25日2面。
「県と政府は24日の3回目の集中協議で、普天間飛行場の名護市辺野古への移設を除き、それぞれ4項目を説明・要望した。・・・政府側は、米軍北部訓練場の過半の返還条件であるヘリパッド移設を念頭に、返還に県の理解が必要だと求めた。」
「一方、政府側は日米特別行動委員会(SACO)合意で北部訓練場の過半の返還の条件になっている東村高江へのヘリパッド移設を踏まえ、政府が目指す本島北部を含む世界自然遺産登録や北部振興に取り組むとした上で、ヘリパッド移設への協力を要請。県側は「地元の意見を伺いながら検討したい」と応じた。
え?「検討したい」と応じたというのは、いったい・・・(汗)。
「解説」記事で政経部の福元記者によれば、政府が翁長知事の矛盾点と見ているひとつにヘリパッド問題があるとまとめていました。
「例えば、北部訓練場の一部返還では、返還部分のヘリパッドを、返還しない部分に移設する条件がある。東村高江の住宅を取り囲むように六つのヘリパッドを建設する計画は、住民らの根強い反発に遭う。県は「地元住民の意見をうかがい、検討する」という考えで明確に反対していない。」
「戦後70年、基地の過重負担を受けてきた県内で、ある地域の負担を減らすために、ある地域の負担が増える構図。・・・いずれも翁長知事が辺野古に反対する理由と重なる。
地元の市長が反対している点を除けば、「なぜ辺野古だけが駄目なのか」といった疑問の声が政府関係者を中心に聞こえてくる。」
こんな底意地の悪い考え方があるのかと、感心するばかりです。あまりに多くの案件で無理強いをしているのは政府のほうでしょう。押し付けられている側が、ぎりぎりの対策を迫られ優先順位を付けながら課題を整理するのは「矛盾」とは言わないでしょう。押し付けられている側に、ひとつだけ反対するのは矛盾するから全部呑め、というのが、「揺さぶり」として通用するものなのでしょうか。そんな見方を地元の新聞が先取り的に解釈して欲しくないなあと感じました。もちろん、翁長知事は選挙に臨む政策発表記者会見で明確にオスプレイパッドに反対と発言したことを私たちは忘れていません。
ところで、「県と政府が出した議題」が表にまとめられていますが、政府側の三つ目に「北部訓練場の
統合で県へ協力依頼」と書かれています。「統合」とは?何のことでしょうか。「返還」ではなくて「統合」?
ふー。
気を取り直して、琉球新報も読んで見ました。
「第3回集中協議/辺野古互いに触れず/負担軽減で駆け引き」『琉球新報』2015年8月25日2面。
「絶対に新基地を造らせないというのは、翁長県政が代わらない限り、変わらない」
24日午前、杉田氏との会談を終えた安慶田氏は県庁で記者団から辺野古以外のテーマを集中協議で扱うことについて「県のスタンスが揺らぐのではないか」と問われ、そう断言した。第3回協議の場で政府は負担軽減策を並べるなど「カード」を切った。
第3回協議での具体的な中身は記事に殆ど書かれていません。
ちなみに同じ紙面の右下、「記者席」のコラムに登場している安慶田副知事は、やんばるでキャンプした北東アジアの子どもたちに「平和の大切さ」「アジアの平和」を語ったとありました。
「辺野古第3回集中協議/安慶田副知事ら一問一答」『琉球新報』2015年8月25日7面。
第3回集中協議の事後に行われた記者会見の内容が詳細に紹介されています。北部訓練場について抜き出してみると・・・。
1段目:安慶田副知事「北部訓練場の統合に関する説明があった。以上の点について話し合った。」
3段目:安慶田副知事「これは北部訓練場の統合に関すること。」「要するに北部訓練場もSACOの防衛事項で結局早めに返還してもらい、そして北部振興のため、今言っているように世界遺産等の申請もできるし、そういうことだから。それには自分たちも積極的に取り組んでいきたいから、県もできるだけ協力していただきたいと言われていたので、これはここに「やりましょう」という話をしていた。」
5段目:安慶田副知事「先ほど申したように北部の訓練場の問題や、あるいは嘉手納以南の返還についての県の協力とかそういうこと。」
ここで安慶田副知事が「統合」という言葉を使っていました。世界遺産登録に向けて「自分たちも積極的に取り組んでいきたいから」、というのは確かにそうでしょうけれども、「これはここに『やりましょう』という話をしていた」というのは何のことやらさっぱり判りません。どれを、どこで、「やりましょう」と、誰が話したのか・・・。
先日、
「秘密の会合体質」のことについてはこのblogでもまとめられました。中谷防衛相が、北部町村の首長と懇談し、そこでヘリパッド問題の話題が出ていたという話です。非公式か非公開か知らないけれど、そうして下地(したじ)を固めてあるから、さっそく事務レベルで議題にしたという流れなのでしょうか。県政としては、そんないきなり言われてもねー、なんてことかな。
・・・と思っていたら、先日8月16日のことについて新聞紙面には載っていないのに、WEBではこんなことが報道されていました。
「中谷防衛相、辺野古直接触れず 翁長知事と会談」『沖縄タイムスプラス』(WEB版)2015年8月16日15:30。
冒頭の約5分間が公開され、中谷防衛相は・・・(中略)また、米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯の移設工事には「2つが完成した。残り(4つ)を整備し、返還できるよう理解してほしい」と求めた。
「知事「沖縄を領土としてしか視ていない」防衛相と会談」『琉球新報』(WEB版)2015年8月17日11:30。
記事の本文では特に書かれていませんが、琉球新報は、WEB版に動画が付いていました。その動画を見てみると、確かに冒頭の中谷氏の発言には以下のようなことがさらっと言われていました。 今回は基地所在市町村の要望など聞くために来た、対策については県とも調整が必要、という流れの後です。
「ま、今後ともよく連携をいたしまして、あの、しっかり対応できますように、特に基地の返還等につきましても、あのー、北部訓練場の返還等におきましても、あの現在あのヘリパッドあの2基完成しておりますが、あの残りもあのすみやかにあの提供出来ればですね、返還が出来るものでございますので、あのこの点についてもご理解頂きたいし、また中部におきましても、まあ面積は確かに0.7%に過ぎませんが、非常に人口の密集しているですね、まあこれから沖縄県の経済にとっても非常に重要な地域でございますので、こういった返還等についても・・・」
翁長知事にはすでに伝えてある、ということだったのですね。いや−、印刷された新聞しか見ないと知らないままでした。
政府の言う「県の協力」とは「残り4基もすみやかに提供」するよう協力せよということのようです。そして、返還の条件だったはずの2基を先行提供したくせに、残りが全部提供されない限り、返還には着手出来ないというのが日本政府の考え方であると。日本政府が誰の立場を代表しているのかが、よくにじみ出ています。
さて、県は「地元住民の意見」を聞いて下さるとの応答でした。ぜひ、いらして下さい。ずっとお待ちしています。そして、翁長知事にも、安慶田副知事にも、私たちはすでに、反対の意思、なぜ反対なのかの理由説明、すべてこれまでにお示しして来ました。でも、これからも何度でも、お話したいです。
例えば、次のような記事。
「高江新設N4ヘリ訓練確認」『琉球新報』2015年8月21日29面。
N4でヘリがブロックつり下げ訓練したという報道。これだけだと、なんだか判らないので、画像に貼ったリンク先のPDF資料には、津堅島のパラシュート降下訓練強行の記事も、同日に起こったこととして、一緒にスクラップしました。5月のハワイで起きたオスプレイ墜落事故の翌日に、高江でオスプレイが訓練をしたことも、ついこの前の出来事です。北部東海岸は米軍が野放図に使える訓練場として荒らされている現状です。「県の協力」を仰ぐもなにも、実態がこれですから。翁長県政がとるべき方針は、県政誕生のときから自ずと定まっているものだと思っています。
日本政府の皆さんには、高江は辺野古の交渉カードではありませんよと、お伝えしておきたいです。